前回、DMO(Destination Marketing / Management Organization)とはなんなのかについて簡単ではありますが説明しました。
今回は従来からある観光協会とのちがいに焦点をあてて学んだことを書いていきます。
観光庁の資料を読み進めていくと、これまで各地の観光産業というものは基本スタンスとして「待つ」もので、地元民しか知らない観光スポットを全国にPRしたり、旅行者が喜びそうなツアープランを企画したりといった積極策はとっていなかったようです。
「情報発信不足」については観光の世界にかかわらず、いろんなところで指摘される課題ですが、問題はどんな情報を発信していくかです。
そのためにも地元の関係者が集まって「自分たちはなにを売り込んでいくのか」をきちんと一本化していかなければならないし、そのための調整機能としてDMOが期待されているのはとてもよくわかります。
現状の(いわゆる観光協会方式の)課題は、次の3つに分類されるそうです。
- 関係者の巻き込みが不十分
- データの収集・分析が不十分
- 民間的手法の導入が不十分
従来の観光協会は、
- 一般社団社団法人
- 公益社団法人
- 任意団体として観光課のなかに設置
といった組織体制が多い印象を持っていました。
攻城団の取り組みをはじめてから、いくつかの観光協会さんで伺った話には
- 運営費だけでは人手が足りない
- 恒例化されたイベントをこなすだけで手いっぱい
- ほとんどがボランティア活動に助けてもらっている
- 役職者は名誉職にちかいので実務には携わっていない
いったことがありました。
まず「来てもらう」ための観光地プロモーションにまで手が回っていませんよね。そりゃあ、地元の情報を市外県外に発信できるわけがありません。
地域における観光関連商工業者間の合意形成はおこなわれていると思いますが、「知ってもらう」「来てもらう」ためのマーケティング戦略・戦術をたて、きちんとPDCAサイクル(費用対効果の分析と仮説立案)を推進していくような組織になっていないと、と観光庁が考えたのもまちがっていないと思います。
DMCというのもあるらしい
また日本版DMOのほかに、日本版DMC(ディーエムシー)という法人も用意しているようでした。DMCはDestination Management Company(デスティネーション・マネージメント・カンパニー)の頭文字を略している法人です。
DMOがMarketing(マーケティング)が主軸なのにたいして、DMCはManagement(マネジメント)が中心だそうです。
ここでまたややこしくなってきました。書籍を買ってきて読み進めていくと、
DMO | 地域をプロモーションし、知ってもらい、来てもらう |
---|---|
DMC | 来てくださる人に対して、実際の手配や体験を提供する |
というふうに住み分けをおこなっているみたいです。
日本版DMCは「地方創生」を観光のチカラで推進して「利益を出し、雇用を生み出す」といったようなより直接的な機能が期待されているようです。
「地域に特化した旅行会社」と置き換えてみると、イメージしやすいのかもしれません。というか、いまのぼくはそのように認識しています。
さて、ここで「ぼくたち攻城団はどういう立ち位置なんだろう?」と考えてみました。
「地域にあるお城にスポットをあて」「お城めぐりを便利で楽しいものにする」という意味では、日本版DMOのような要素がありそうです。
いま取り組みがスタートした「七尾城周辺の観光振興事業」では、着地型ツアーの開発が視野に入っていますので、DMC的な動きのほうが強そうです。とはいえ、攻城団は旅行業の免許を持っていませんので、主体者として着地型ツアーの募集開催はできません。
こうしてみると、攻城団は「日本版DMOや日本版DMC」のマーケティングパートナーという位置づけが、いちばんしっくりきそうです。
ぼくらが実現したいことのひとつは「日本の魅力の再発見」であり、「地域のまだ知られていないお城にスポットをあてる」ことで、みんなでお城めぐりを楽しみながら、日本全国を訪問していくことです。
そうすると受け入れ先の地域の方々が、DMOを運営しているとしたら、そこにみんながいく「きっかけ」をつくっていくことなんですよね。
直接聞いちゃうことにしました
で、話は戻りますが、「どうやってDMOやDMCは組成されていくんだろう」とか、「資金調達はどうするんだろう」とか、とても気になるわけです。
そもそも非営利団体として活動していくのだとすれば「持続的な運営資金はどう調達するのだろう」といったことなど疑問がいっぱいあります。攻城団は非営利団体ではないですけど、それでも永続化の実現にこれだけ苦労しているわけですしね。
モヤっとしたものを、この数ヶ月抱えてきました。そして、モヤっとしたことを解消するには「日本版DMOや日本版DMC」の認定をおこなっている省庁に直接聞いてみるしかないなぁ、と考えました。
ということで、観光庁に伺って話を聞けないか相談したところ、ヒアリングの機会をいただくことができました(お願いしてみるものですね)。
「日本版DMOや日本版DMC」はどんなふうに作っていくのか、どうしてこうした取り組みを進めているのか、といった制度のことはもちろん、「日本版DMOや日本版DMC」 が地域に誕生することよって、ぼくらの旅行(観光)にはどんな影響があるのかとか、いろいろ率直に質問をぶつけてみようと思います。
そしてその次は、取り組みを進めている人たち(DMOのなかの人)にも直接お会いして、話を伺ってみたいとも考えています。
まずは観光庁にお伺いしてきて、またご報告をしますね。楽しみにお待ちください。