大東市におけるシティプロモーション課の役割
本日はよろしくお願いいたします。まず最初に大東市には観光協会がありませんよね。そのなかで金盛さんが所属されている都市魅力観光グループというのはどういう役割を担っているのかを教えていただけますか。
はい、名称に「観光」とついているため観光名所・史跡について詳しいと思われがちなのですが、私どもの役割としましては、既存のもの、いまある大東市の魅力をいかに市内外に発信していくかということが主たる業務であると考えています。
なるほど。ほかの自治体だとシティプロモーション課と呼んでいるような役割ですね。
そういえば、去年お城EXPOにブース出されてましたよね。
大東市には生涯学習課という調査・研究をメインとする部署がありまして、その部署が出展してました。当グループはそれらの成果をPRするという役割分担になります。
ぼくらがお付き合いの多い部署も観光課と文化財課にわかれますけど、情報共有や相互協力体制が大切になりますね。とくに文化財の保存と活用が叫ばれる中ではより密接になってきていると思います。
ではシティプロモーション的な観点で、外部にPRしていく素材として三好長慶や飯盛城があるということでしょうか。
大東市の知名度をいかに上げていくかという課題に対して、「大東市はここにあります」「大東市ってすごい町でっせ」と声高にいうだけでは、なにも伝わらないので、まずは偉大な歴史資源があることをきっかけに大東市を知ってもらおうと考えています。ある意味で歴史上の人物の力を借りているわけですね。
その結果、三好長慶、飯盛城、大東市の3つが、みなさんの頭の中でつながることを目標にしています。
今日、大阪駅から住道駅を経由してお伺いしたんですけど、すごく近くてびっくりしました。
勝手なイメージですが、もっと遠いと思っていましたが、電車だと20分くらいなんですね。
そうなんです、アクセスが良いところは本市の誇れるところです。
「城たび」の記事公開後のインパクト
今年の3月に「城たび」モデルコースの記事をつくらせていただきましたが、なかなかの反響があったそうですね。
いやもうびっくりするくらいの反響でした。
これまで飯盛山を訪問される方はJR野崎駅をスタートにして、大東市側から山に登り、四條畷市のほうに下山して帰られるハイカーさんが多かったのですが、今回のモデルコース公開からはこのコースを利用されるハイカーさんが増えています。
そうなんですね。
このルートは市内にあるほかの城址(野崎城、三箇城)との関係、大東市立歴史民俗資料館に立ち寄っていただくことができ、きっと本市の歴史資産を体感いただけると思います。
うれしいですね。
ぼくらはどのくらい記事が見られているかはわかりますが、目指しているのは記事をご覧になった方がじっさいに現地を訪問されることなので、こうして効果がはっきりとわかるくらいの反響があったというのはありがたいです。
本市もウェブサイトでモデルコースを公開することははじめてでしたが、記事をご覧になって訪れる方が増えたのはほんとうにうれしいですね。
これまでもモデルコースはいくつかつくってきているのですが、ぼくらは自分たちもお城めぐりをするので、彼らが期待していることを踏まえてコースづくりをしています。具体的にはせっかく来たなら近くにあるお城もできるだけ立ち寄れるようにってこととかですね。
ほかにも健脚の方ばかりではないので、休憩ポイントなどもしっかり検討して、余裕のある行程にしています。そうするとこのルートがベストだったんです。
ちなみに反響があったことで、なにか影響がありますか。
そうですね。素晴らしいモデルコースができましたから、うまく活用していきたいですね。
ボランティアガイドの方は連絡をうけて、いっしょに山に登られるのですか。
はい、申込用紙を提出いただいて、日程を調整後、いっしょに登っています。
飯盛山は複数のハイキングコースがありますので、依頼された方とコースを決めるのですが、攻城団の記事をご紹介して「こういうルートがあるんです」と案内して、コース決めに役立ててもらえてるようです。
おお、それはうれしいですね。
攻城団なら新しい層へアプローチできそう
今回の「城たび」への出稿について、どうやって予算稟議を通したのかを教えていただけますか。
ぼくらが全国の自治体の方々と話をしていて感じるのは、現場の担当者はデジタルやインターネットをPRに活用しなければという危機感を持っている一方で、まだまだ組織としては二の足を踏んでいるところが多いということです。
大東市さんのケースがなにかしらヒントになるのではないかと思うんですよね。
大東市では、歴史資源のキーコンテンツとして、三好長慶や飯盛城を設定し、全国にPRするためにチラシや冊子を発行しています。またイベントとしても「三好長慶公武者行列in大東」という武者行列イベントも実施しています。
このようにさまざまな手法で情報発信をしていますが、かぎられた予算の中で効果的に情報を発信するために、インターネットでの発信は不可欠であると考えています。
(※瀧田注:次回の「三好長慶公武者行列in大東」は2020年3月7日に開催)
おっしゃるとおりです。
本市の歴史資源のキーコンテンツである三好長慶と飯盛城のPRにおける新たな戦術を検討していたところ、攻城団さんとの出会いがありました。
タイミングがよかったんですね。
ええ、それで予算要求にあげてみようと。
お城好き――つまり「大東市までわざわざ来ていただけそうな層」にPRできるということはこれまでのPR活動の中ではなかった視点でしたから、ここを訴求ポイントにしてみようと。
新しい手法という切り口ではなく、単純に「訴求できる対象がいままでとちがうんだ」ということを強く推しました。
ようは新しい層にアプローチできるという期待ですね。
たしかに攻城団を利用されたり、閲覧されている方は、お城好きであると同時に、旅行好きでもありますので、来訪率は高いと思います。
その訴求ポイントが良かったのかは直接聞いたわけじゃないのでわからないないのですが、実施できたということは確実に届いたんだと思います。
今後の展開について
大東市としてはこれからも三好長慶や飯盛城をプッシュされると思いますが、どんなことを考えてらっしゃいますか。
市民のみなさんも三好長慶・飯盛城の普及活動を熱心にされていて、それぞれの得意分野を活かした取り組みをおこなっていますので、これからも市民のみなさまと力をあわせて盛り上げていきたいですね。
その中でたくさんの方に訪れていただき、大東市のことを知っていただく、そして大東ファンが増えていく、この好循環を目指したいです。
そのために三好長慶と飯盛城をこれからもプッシュしていきたいですね。
いろいろな展開ができるといいですね。
では最後に、この記事を読まれている方に向けてメッセージをお願いできますか。
大東市に住んでらっしゃる方は、「飯盛城ってお城が残っていたらいいのにね」っておっしゃいます。ぼくもその気持ちはよくわかるのですが、先日も発掘調査の結果、大量の石垣が発見されまして、これは織田信長の時代より前の石垣だという発表がありました。このように飯盛城はこれからもどんな情報が出てくるかわからない、未完成・伸びしろがあるお城だと思っているんです。
攻城団のみなさんはきっとそうした情報にわくわくしていただける方々だと思いますので、ぜひ新発見があった際にはご自身の目で確認しに飯盛城まで来ていただけるとうれしいですね。
それから、いま飯盛城は国指定史跡の指定を目指しているのですが、見事指定と相成った際には、みなさんと盛大にお祝いができたらいいなと思っておりますので、その際はどうぞよろしくお願いいたします。
ぜひいっしょにお祝いしたいですね。本日はありがとうございました。
インタビューを終えて
「城下町の仕事人たち」、第4弾は2019年(平成31年)3月に「城たび」のモデルコース記事を公開した、大阪府大東市役所の金盛さんににインタビューさせていただきました。
初めて告白しますが、お問い合わせをいただくまで「三好長慶、飯盛城、大東市」の3つはぼくのなかで繋がっていませんでした。もっというと大阪府のどのあたりに大東市があるのかさえ知らなかったのです。
(そしてぼく自身にとっても、この「知らなかった」を解消できたのが城たび記事でした)
インタビューの当日、カメラマンの山口さんと大東市役所にお伺いしたのですが、玄関には三好長慶の銅像があり、受付前には飯盛城コーナーがありと、金盛さんがおっしゃっているように歴史資源のキーコンテンツである三好長慶と飯盛城のPRに力をいれているんだなと強く実感しました。
そして、金盛さんは三好長慶・飯盛城の認知を高め、交流人口を増やすための情報発信の手法として「デジタルシフト」に関心をお持ちなんだろうなと感じたのがインタビューを終えての第一印象でした。
「城たび」という記事を一緒につくり、編集・配信し、同時にご当地缶バッジ「飯盛城」を制作した結果、飯盛城を訪れる方が増えた、というお話を改めてお聞きしたのですが、攻城団にとっては大変うれしい話です。
と同時に、お城がある地域視点でいうなら「次にいくお城」に選ばれるためのきっかけを如何にしてつくっていくか――しかもイベント以外で――を考察するための先行事例になったのではないかと思います。
自分の中にアンテナが立ったせいか、三好長慶という武将名をネット記事やテレビで見かけることが増えてきた気がします。そのひとつの要因に大東市との取り組みが寄与しているのは間違いないと考えています。
大東市を訪れる方が、飯盛城を満喫し、その歴史を楽しく学ぶことができるように、ぼくらも引きつづき金盛さんたちとさまざまな企画を推進していきたいと考えています。