全国のお城の入城者数(入場者数・観光客数)調査レポート【2025年版】

攻城団では毎年全国のお城(具体的には自治体や管理運営団体、観光協会等)にヒアリングをして、それぞれの入城者(入場者、入館者、入園者等)数を調査・集計しています。
お城によって「年」だったり「年度」だったりと集計期間が異なるので、年度集計の締めが過ぎた4月以降に調査をはじめ、ある程度の情報が揃ったタイミングで公開しています。

以下、今回のレポートをご覧いただく前の注意事項です。

  • このランキングは「令和6年(2024年1月〜12月)」もしくは「令和6年度(2024年4月〜2025年3月)」の数字を集計したものです
  • 工事などによる休館中のため「0人」の回答も含め、186城の数字が集まりました
  • 城址公園や山城などは無料で見学できるため、さまざまな方法を用いて推計されています
  • 数字については自治体等の発表資料や新聞報道を参照したほか、直接メールや電話でヒアリングをおこなっていますが、回答が得られなかったお城は対象外としています
  • 集計中や発表時期が夏以降と回答があり、発表日に間に合わなかったお城も対象外としています(翌年の発表時に反映させます)

これらの点も留意しつつ、データを参照していただければ幸いです。

今回のポイント

全体的な傾向として、今回の調査で判明したお城のうち前年比でプラスになっているのは半数強(56.2%)で、前回が約7割(68.3%)がプラスだったことを踏まえると、入城者数の伸びが少し鈍化したように見えます。
ただし個別に見ていくと、ランキングで上位に入るような全国的にも知名度の高いお城はほぼ前年を上回る入城者数となっており、二極化が進んでいると言えるかもしれません。

観光における新型コロナウイルスの影響がほぼなくなったこと、前回と比べるとNHK大河ドラマが「どうする家康」から平安時代が舞台の「光る君へ」になりテレビ等の追い風がなかった点は全国に共通しているため、インバウンド(訪日外国人観光客)の多い観光地のお城は増えて、そうではない地方のお城は苦戦しているといった印象です。

参考までに「日本100名城」のうち回答が得られた84城のうち、一昨年の数字もわかっている78城を対象に前年比を確認すると、46城が増加、32城が減少でした。
ただダウンしているお城も95%前後と微減のところが多く、現状では二極化が起きているとまでは言えませんが、今後も注視する必要はあると感じています。

では全国の入城者数ランキングを発表します!

2024年 全国入城者数ランキング(有料施設)

昨年に続いて大阪城(大阪府大阪市)が1位となりました。2位には名古屋城(愛知県名古屋市)が、3位には二条城(京都府京都市)とトップ3は昨年と同じ結果でした。いずれのお城も前年比で約10%ほど増えていますが、前回と比べると伸び率は大きく下がっています。

順位城名年間入城者数前年比有料
比率
外国人
比率
1大阪城2,659,736110.7%88.1%
2名古屋城2,234,976108.5%83.5%28.1%
3二条城2,046,329110.2%90.9%
4姫路城1,532,111103.6%93.1%35.8%
5熊本城1,419,664104.9%91.6%
6首里城1,155,168120.4%100.0%
7松本城984,549109.7%87.8%19.9%
8犬山城652,385107.9%
9彦根城633,73697.3%90.6%5.8%
10小田原城605,373102.7%93.6%10.5%
有料施設ランキング

4位以下の顔ぶれも昨年と同じでした。
結果として上位10城が前回と一致したため集計してみましたが、一昨年が12,853,759人、昨年が13,924,027で10城全体の伸び率は108.3%でした。
なお名古屋城や姫路城のインバウンドが過去最高であることからも、上位のお城はいずれも外国人観光客の伸びが増えていることが予想されます。裏を返すと名古屋城や姫路城の日本人入城者数は前年割れとなっており(詳細は後述)、おそらく全国的に見てもこの傾向は強いのではないかと思われます。
※このランキングは招待券などによる無料入場者も含む合算値(総入城者数)で算出しております。

有料施設のほとんどは天守などの建物があるお城ですので、これだけ国内外からの観光客が集まってしまうと天守に入るまでに1時間以上待たなければならないことも多く、混雑対策などが課題になっています。たとえば松本城では場内アナウンスやホームページで待ち時間を告知しており、大阪城や二条城、姫路城などでは事前購入できる電子チケットを導入するなどの工夫をしています。

2023年 総合ランキング

こちらは無料で見学できるお城(城址公園など)も加えたランキングとなります。
前回1位の金沢城公園(石川県金沢市)は能登半島地震の影響で落ち込みましたが、それでも3位にランクインしています。1位と2位は有料施設と同じ大阪城と名古屋城でした。
そのほか無料施設としては5位に江戸城(東京都千代田区=皇居東御苑の入園者数)が、8位に上田城(長野県上田市)がランクインしています。

順位城名年間入城者数前年比有料
比率
外国人
比率
1大阪城2,659,736110.7%88.1%
2名古屋城2,234,976108.5%83.5%28.1%
3金沢城2,131,27482.5%
4二条城2,046,329110.2%90.9%
5江戸城1,813,022126.8%56.9%
6姫路城1,532,111103.6%93.1%35.8%
7熊本城1,419,664104.9%91.6%
8上田城1,363,400100.5%
9首里城1,155,168120.4%100.0%
10松本城984,549109.7%87.8%19.9%
全施設ランキング

注目のお城など

以下、インバウンドや大河ドラマの影響など、トピックに絞って注目してみたいと思います。

インバウンドの影響

日本政府観光局(JNTO)が発表する数字によれば、2024年の訪日外客数は3687万人と2023年(2507万人)の1.47倍となりました。

前回から調査協力を追加でお願いした外国人観光客数について、今回も同数(52城)の回答が得られました。大阪城や二条城など非公表のお城の実態はわかりませんが、回答いただいたお城は前年を上回るどころか過去最高を記録していました。
名古屋城は28.1%、姫路城は35.8%、江戸城(皇居東御苑)は56.9%といずれも過去最高です。都市部以外でも松本城(19.9%)や小田原城(10.5%)や岡山城(18.0%で過去最高)のようにインバウンドの影響が全国に波及していることがわかります。
一方で、彦根城(5.8%)や会津若松城(5.8%)はまだ外国人比率が低く、新幹線でのアクセスの利便性が障害になっていると思われます。ただ大洲城(18.1%で前年から倍増)のようにソウル便の増便や台北便の運行再開など、アクセス環境の改善次第でまだまだ伸びる可能性はあるでしょう。

城名令和5年度令和6年度メモ
名古屋城20.2%28.1%過去最高
姫路城30.6%35.8%過去最高
江戸城46.8%56.9%過去最高
松本城18.0%19.9%
彦根城5.2%5.8%
小田原城8.4%10.5%
会津若松城4.8%5.8%
岡山城12.8%18.0%過去最高
大洲城9.0%18.1%
おもなお城の外国人比率の前年比較

インバウンドについては、在住外国人との区別や団体購入時の確認(外国人ツアーの場合もチケットの代理購入は日本人ガイドが行うことが多い)など調査が大変で難しいのは重々承知していますが、全国的に状況を把握して、オーバーツーリズム等の課題やその対策を共有していくためにも今後も継続して調査を依頼していくつもりです。
※外国人の人数はいずれも推計値で、調査方法もパンフレットの持ち帰り数や受付でのヒアリングなどさまざまです

また日本人のみに絞ると名古屋城と姫路城では前年割れとなっています。

城名令和5年度令和6年度前年比
名古屋城1,643,1441,607,25297.8%
姫路城1,027,267982,95095.7%
江戸城760,596781,412102.7%
日本人のみの人数を前年と比較

いずれも微増、微減ですので今回の結果だけで言えることは少ないのですが、来年以降も指標として追いかけたいと思います。

大河ドラマの反動

一昨年(2023年)のNHK大河ドラマ「どうする家康」の大河ドラマ館は徳川家康にゆかりのある静岡市、浜松市、岡崎市の3か所に開設されました。
前回のレポートでは駿府城、浜松城、岡崎城がいずれも前年比で大きく増加したことを報告しましたが、昨年はどうだったのでしょうか。
結果は駿府城が64.0%、浜松城が54.7%、岡崎城が47.9%といずれも落ち込んでいますが、大河ドラあま放送前年の数字と比べると駿府城が195.0%、浜松城が104.6%、岡崎城が116.1%となっています。駿府城の伸び率の大きさは前回同様、静岡市歴史博物館によるものだと思われます。

城名令和4年度令和5年度令和6年度前年比
駿府城127,523388,452248,73064.0%
浜松城218,743418,104228,77454.7%
岡崎城185,105448,241214,85147.9%
大河ドラマ館が開設されたお城

まとめ

そもそも論としては有料施設と無料の城趾を比較することに意味はありません。
有料のお城でも入場料は100円のところもあれば、二条城のように1000円以上(二の丸御殿込みで1300円)と差がありますし、無料であっても公園化された市街地の城址もあれば、軽登山のような山城もありますので、これを単に人数の多寡で並べることの是非については葛藤もあります。
ただお城にはこのくらいの人が訪問しているという規模感を伝える上でランキングでの発表がわかりやすいため、随時補足や注釈を加えながら慎重に発表するようにしています。けっして優劣を決めるものではありませんし、そう受け取らないでいただけますようお願いいたします。

また多くの自治体や観光協会では地元のお城と同規模のお城をチェックしたり、それらのお城の過去の推移などを比較することで観光施策の立案にご活用いただいていると聞いています。
たとえば2022年に値上げされた二条城の状況は、今年の春から値上げされた大阪城や松本城は参考にされたと思いますし、今後値上げが計画されている姫路城の意思決定においても活用されたでしょう。
今回のレポートでも触れましたが、大河ドラマによる影響やその反動についての数字も来年放送される「豊臣兄弟!」の受け入れ準備を進めるうえで参考になるはずです。

なお能登半島地震の影響もあり、七尾城(石川県七尾市)は8割減、金沢城も2割減という結果でした。
熊本城、首里城、丸亀城(香川県丸亀市)など、全国にはまだまだ修復途中のお城があります。またようやく立入禁止が解除される鳥越城(石川県白山市)、令和2年度の被災により休館が続いていた人吉城歴史館(熊本県人吉市)もリニューアルオープンされることとなりますが、こうした復旧の過程を記録していくことも本調査の目的のひとつですので、引き続き見守っていきたいと思います。

攻城団では全国のお城はライバル関係にあるのではなく、さまざまな文脈(コンテクスト)でつながりあえるパートナーになれることを提案しておりますので、各地のお城で実施された良い施策はどんどん取り入れていただきたいです。
最後になりますが今回もお忙しい中、調査にご協力くださったみなさまに感謝するとともに、今後もしっかりと本調査を継続していくことをお約束します。
また攻城団としてもみなさまのお役に立てるよう、新しい支援策を企画開発していきたいと思っております。

なぜ攻城団が調査するのか

これまでお城の入城者数ランキングとして発表されてきたのは全国城郭管理者協議会が発表するものが中心で、加盟城郭に限定されたものでした。

ではなぜ攻城団がわざわざ調査をして発表するのか。

これは「スタンプのない『日本100名城』以外のお城の訪問記録も残したいから攻城団をつくった」のと同じ理由です。
個人的に「わかりやすさのためにあえて絞ること」を否定しません。事実、攻城団でも「制覇モード」という機能を用意して、初期状態では知名度の高いお城だけが検索結果に表示されるようにしています。初心者にとって多すぎる選択肢は不親切でしかないとぼくは考えています。

ただし非表示にしたお城も確実に存在していたのです。そのお城にも歴史があり、現地では見学しやすいように整備をしたり案内板や城址碑を建ててくださっている方々がいらっしゃいます。
そこで攻城団は特定の基準にとらわれず、可能なかぎり対象を広くとって調査をおこない、お城を大事にされている方々の成果も記録していこうと決めました。

そして数字を把握し共有するだけでなく、長くマーケティングに携わってきた知見を活かしながら「なぜ伸びたのか(落ち込んだのか)」の考察も加えて、より多くのお城関係者のみなさんにとって役立つ存在になりたいと考えています。

攻城団では現地で開催されるイベント情報や日々の天気のデータも記録していますし、団員が残してくれた膨大な写真やコメントもあります。
こうした定量・定性情報を組み合わせつつ、お城を観光振興に活かす成功モデルを構築していきたいのです。

ぼくらが目指しているのは「じっさいにお城に訪問する方を増やす(そして満足いただき再訪問率も高める)」ことなので、全国各地の観光再生にたずさわっていければと思っています。
ありがたいことに日々の活動の中で多くの自治体や観光協会の方々との接点が生まれています。そのご縁を頼りに来年以降も、攻城団では可能なかぎり多くの城・城址(管理事務所や自治体の広報課、観光協会等)に問い合わせて、各地を訪問した観光客の数値を把握して発表していきます。関係各所のみなさまにはお忙しい中恐縮ではございますが、ご協力をお願いいたします。

これからも攻城団を、利用者にとって楽しく便利なだけでなく、現地の方々にも喜ばれるようなサービスに育てていくために、引きつづきご支援くださいますようお願いいたします!

今回集計したデータ

全国のお城にご協力いただき集計したデータを以下に公開します。

一覧表にある有料施設の数字は合算値(一部無料を含む)となっています。

調査概要

調査期間2024年5月16日(金)〜6月22日(日)
調査方法弊社より対象自治体・観光協会にアンケート票(PDF)をメール送信して返送またはフォームからの回答を依頼。
調査件数212件
回答件数190件(回収率89.6%)

送付できなかった、回答が得られなかったお城のうち、一部は新聞報道や自治体のサイトで発表された資料を参照して入力しました。

入城者数把握のむずかしさ

「入城者」といってもじつは統一された基準がないということをあらためて説明しておきます。
天守等の有料エリアの場合、チケットの販売数で確実な数字が出せるものの、招待チケットや無料招待日などがあると誤差が生じます。
そして城址公園など無料エリアについては、たとえば近隣住民が犬の散歩で毎日訪問していた場合にもカウントするのかなど、こうした観光客以外の入城者(この場合、来園者)を含めるかどうかの基準が決まっていません。山城などは赤外線センサーでカウントしているところもありますが、どのくらい正確に計測できているかは疑問です。

ただどのような方法であれ、そのお城において常に同じ基準で集計されているなら傾向を捉えることはできますし、施策の効果を分析する上でも十分だと考えています。

お気軽にお問い合わせください

攻城団では常にプロモーションする側(みなさま)とされる側(読者・利用者)の双方が納得し、また最大限の効果を発揮できるよう、細部にわたるまで入念に企画を立案いたします。検討の結果、お断りせざるを得ないこともありますが、まずはお問い合わせください。
また常に新しい取り組みを模索していますので、掲載されていない施策についてもお気軽にご相談いただけますようお願いいたします。
みなさまのブランドを毀損することなく、ファンの拡大につながるように我々にお手伝いさせてください。

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