全国のお城の入城者数(入場者数・観光客数)調査レポート【2023年版】

攻城団では毎年全国のお城(具体的には自治体や管理運営団体、観光協会等)にヒアリングをして、それぞれの入城者(入場者、入館者、入園者等)数を調査・集計しています。
お城によって「年」だったり「年度」だったりと集計期間が異なるので、年度集計の締めが過ぎた4月以降に調査をはじめ、ある程度の情報が揃ったタイミングで公開しています。

以下、今回のレポートをご覧いただく前の注意事項です。

  • このランキングは「2022年(1月〜12月)」もしくは「令和4年度(2022年4月〜2023年3月)」の数字を集計したものです
  • 工事などによる休館中のため「0人」の回答も含め、過去最多となる180城の数字が集まりました
  • 数値については自治体等の発表資料や新聞報道を参照したほか、直接メールや電話でヒアリングをおこなっていますが、回答が得られなかったお城は対象外としています
  • 集計中や発表時期が夏以降と回答があり、発表日に間に合わなかったお城も対象外としています(翌年の発表時に反映させます)
  • 入城者数のカウント方法についてはそれぞれのお城ごとに異なっており、有料入城者数(=チケット販売数)のみのお城もあれば有料と無料を合算して発表されているお城もありますし、無料で見学できるため推計で発表されているところもあります

これらの点も留意しつつ、データを参照していただければ幸いです。

全体的な傾向として、コロナ禍の低迷を脱し大幅に回復したお城が多かったです。前年の数字も把握できている160城のうち、前年比プラスが138城、前年比マイナスが22城と86.3%が前年を上回る結果となりました。
またランキング上位のお城は(コロナ禍の減少幅も大きかったこともあり)前年比で100%超え(=倍増以上)となったところも多く、中でも大阪城は3倍以上の入城者数を記録しています。昨年の発表時は外国人観光客への依存度が高い大阪城や二条城、姫路城は低迷していましたが、2022年10月からは入国上限も撤廃となり、いずれも2019年(令和元年度)の5割〜6割ほどまで回復していることがわかりました。

では2023年版、全国の入城者数ランキングを発表します!

2023年 全国入城者数ランキング(有料・合算)

昨年に続いて名古屋城(愛知県名古屋市)が1位になりました。天守の再建計画は頓挫していますが、日本人にも外国人にも評価の高い本丸御殿に加え、2021年にオープンした「西の丸御蔵城宝館」で精力的に企画展が開催されていることもプラス要因なのだと思います。1,529,287人は前年(687,305人)の倍増以上(122.5%増)です。
2位も二年連続で二条城(京都府京都市)となりましたが、前年比(136.4%増)では名古屋城を上回っています。また3位には大阪城がトップ3に帰ってきました。前年比は今回トップクラスの242.3%増となり、外国人観光客が戻ってきたことがよくわかる結果となりました。

順位城名2022年/令和4年度前年比
1名古屋城1,529,287122.5%
2二条城1,267,422136.4%
3大阪城1,174,000242.3%
4熊本城1,002,978124.0%
5姫路城957,355115.6%
6米沢城748,35629.6%
7松本城735,01382.0%
8首里城650,539208.2%
9彦根城578,67460.9%
10小田原城524,20140.0%

トップ3だけでなく、4位の熊本城(124.0%増)、5位の姫路城(115.6%増)とトップ5すべてが倍増以上という結果で、国内外から多くの観光客がお城を訪問したことが証明されました。
なお熊本城は被災後7年ぶりに100万人超えだそうです(震災後は無料エリアの集計でしたが、令和3年度から集計対象を有料エリアのみに戻しています)。

トップ10の合計入城者数を過去3回で比較すると、前々回が3,274,085人、前回が4,108,524人、そして今回が9,167,825人とその回復ぶりがよくわかります。
まだ工事が続いている首里城も8位にまで戻っており、座喜味城や勝連城、中城城などほかの沖縄県内のグスクも数字を伸ばしています。

2023年 総合ランキング

こちらは無料で見学できるお城(城址公園など)も加えたランキングとなります。
1位は金沢城公園(石川県金沢市)の1,936,876人(71.3%増)で、そのほか例年上位の江戸城(東京都千代田区=皇居東御苑の入園者数)がランクインしています。
なお宮内庁が発表している「皇居東御苑 入園者数」によれば外国人比率は令和3年の3.8%から12.2%まで回復していることがわかります(令和2年は21%)。コロナ前は40%以上だったことを踏まえるとまだまだですが、今年以降また増加していくことが予想されます。

順位城名2022年/令和4年度前年比
1金沢城1,936,87671.3%
2名古屋城1,529,287122.5%
3二条城1,267,422136.4%
4大阪城1,174,000242.3%
5熊本城1,002,978124.0%
6姫路城957,355115.6%
7米沢城748,35629.6%
8松本城735,01382.0%
9首里城650,539208.2%
10江戸城588,548221.9%

総評、注目のお城など

8割以上のお城が前年比でプラスになっているので、総論としては「コロナ禍からの回復が全国的に見て取れる」としか言えないのですが、大河ドラマの影響や長期休館からリニューアルしたお城など、いくつかのトピックに絞って注目してみたいと思います。

長期休館からリニューアルした天守

昨年は長浜城が4月1日に、福山城が8月28日に、岡山城も11月3日にと3つのお城の天守がリニューアルオープンとなりました。
それぞれコロナ前に迫る勢いで回復しています。岡山城は11月オープンのため他と比べると少なく見えますが、11月から3月までの5か月間の数字と考えるとかなりすごいです。

会津若松城も2022年10月〜翌年3月まで集計対象期間の半分において天守を休館していましたが、それでも前回を上回る入城者数(16.6%増)を記録しており、また郡上八幡城も2022年11月21日~翌年GW前まで改修工事のため休業していましたが前年比17.8%増といずれも特筆すべき結果です。
掛川城は年度の大半(6月1日から翌年3月末)を天守修復工事のため閉館だったこともありわずかに前年を下回る結果となりましたが、おそらく来年発表する数字は飛躍的に回復していると思われます。

「鎌倉殿の13人」の畠山重忠効果が大きい菅谷館

2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は鎌倉時代が舞台でもあり、お城への影響はほとんどないと思われましたが、中でも主要人物のひとりで「坂東武士の鑑」と称された畠山重忠ゆかりの菅谷館(嵐山史跡の博物館の入館者数)はかなり影響があったようです。

鎌倉時代に武士が全国に広まっていき、彼らの子孫が戦国時代を生きたことを考えると、地域の歴史をさかのぼって学ぶことはとても有意義だと思います。
(毛利元就の先祖が大江広元であるように)

どうする家康関連のお城の状況

今年の大河ドラマ「どうする家康」にあわせて大河ドラマ館がオープンする地域にある、岡崎城・浜松城・駿府城についても調べてみましたが、いずれも前年比で伸びてはいるもののまだ大河ドラマの効果と呼べるほどではありませんでした。
ただ12月頃から増えてきたという報告もいただいているので、おそらく来年発表の数字ではこれらのお城が大幅に増加しているものと思われます。

熊本城が7年ぶりに100万人超え

先述のとおり、熊本城は被災後では初となる7年ぶりの100万人超えでした。
熊本城では震災後、有料エリアが立入禁止になったため無料エリアでの集計結果を発表していましたが、2021年6月に天守が再オープンしたこともあり、一昨年の令和3年度から集計対象を有料エリアのみに戻しています。
コロナ前からも含む、少し長い期間でのグラフをつくってみました。

平成20年度に220万人という記録がありますが、コロナ禍直前は170万人くらいだったので、数年のうちに戻りそうな勢いですね。

有料化した勝連城

勝連城は2022年1月4日から「あまわりパーク」として有料化しました。
(あまわりパークは前年10月にオープンしていましたが、年内は無料公開でした)
この有料化がどのくらい入城者数に影響するのか気になっていましたが、前年比46.1%増という結果でした。もちろんコロナ禍で落ち込んだ反動ではありますが、収益を整備に回すことでさらに魅力を高めていくこともできますので、今後に期待が持てる数字だと思います。

まとめ

ここ数年、コロナ禍での異常値であることを踏まえて発表を続けてきましたが、ある意味では今回の発表から新しい時代の計測がはじまったと言えるかもしれません(再び大規模流行が起きなければですが)。
今年のGWにおける全国の観光地は大変盛況でした。またこれからはじまる夏休みでも各地のにぎわいが期待されています。

迎える側としても大河ドラマ「どうする家康」との接点をうまく見つけて企画展の開催や限定御城印の発売などプロモーションに活かしているところも増えています。
これまでは耐えるだけだったのが、こうして人を呼び込むために知恵を絞ることができる状況になったのは大変喜ばしいことで、攻城団としても「お城ニュース」やSNSなどで情報発信の支援をしていければと考えています。

本来この調査は自然災害や感染症など広範囲の影響を見るためのものではなく、個々のお城での取り組みがどのくらい効果を上げることができたのかを記録し、またそうした知見を共有することで、全国のお城のPRに活用いただくことを目的にしています。
たとえば田原城の入城者数は田原市博物館の入館者数を記録していますが、一昨年の17,015人から8,903人と半減しています。この理由について尋ねたところ一昨年が企画展の当たり年で平均を大きく上回る来館者があったことがわかりました(つまり落ち込んでいるわけではない)。
このようにさまざまな要因が作用することを踏まえて長期的な視点に立ち、少しずつでもベースアップにつながる取り組みを考えるヒントになることを願っています。

今回もお忙しい中、調査にご協力くださったみなさまに感謝するとともに、今後もしっかりと記録を続けていくことをお約束します。
また攻城団としても引き続き、新しい支援策を企画開発していきたいと思っております。

なぜ攻城団が調査するのか

これまでお城の入城者数ランキングとして発表されてきたのは全国城郭管理者協議会が発表するものが中心で、加盟城郭に限定されたものでした。

ではなぜ攻城団がわざわざ調査をして発表するのか。

これは「スタンプのない『日本100名城』以外のお城の訪問記録も残したいから攻城団をつくった」のと同じ理由です。
ぼくらは「わかりやすさのためにあえて絞ること」を否定しません。攻城団でも「制覇モード」という機能を用意して、初期状態では知名度の高いお城だけが検索結果に表示されるようにしています。初心者にとって多すぎる選択肢は不親切でしかないとぼくは考えています。

ただし非表示にしたお城も確実に存在していたのです。そのお城にも歴史があり、現地では見学しやすいように整備をしたり案内板や城址碑を建ててくださっている方々がいらっしゃいます。

そこで攻城団は特定の基準にとらわれず、可能なかぎり対象を広くとって調査をおこない、お城を大事にされている方々の成果も記録していこうと決めました。
そして数字を把握し共有するだけでなく、長くマーケティングに携わってきた知見を活かしながら「なぜ伸びたのか(落ち込んだのか)」の考察も加えて、より多くのお城関係者のみなさんにとって役立つ存在になりたいと考えています。

攻城団では現地で開催されるイベント情報や日々の天気のデータも記録していますし、団員が残してくれた膨大な写真やコメントもあります。
こうした定量・定性情報を組み合わせつつ、お城を観光振興に活かす成功モデルを構築していきたいのです。

ぼくらが目指しているのは「じっさいにお城に訪問する方を増やす(そして満足いただき再訪問率も高める)」ことなので、全国各地の観光再生にたずさわっていければと思っています。
ありがたいことに日々の活動の中で多くの自治体や観光協会の方々との接点が生まれています。そのご縁を頼りに来年以降も、攻城団では可能なかぎり多くの城・城址(管理事務所や自治体の広報課、観光協会等)に問い合わせて、各地を訪問した観光客の数値を把握して発表していきます。関係各所のみなさまにはお忙しい中恐縮ではございますが、ご協力をお願いいたします。

ぼくらは攻城団を、利用者にとって楽しく便利なだけでなく、現地の方々にも喜ばれるようなサービスに育てていきたいので、引きつづきご支援くださいますようお願いいたします!

今回集計したデータ

全国のお城にご協力いただき集計したデータを以下に公開します。

最新のレポートをご参照ください

なお今回から「有料のみ」と合算値(一部無料を含む)を明示するようにしました。「合算」はほぼ有料入城者ですが、一部招待枠や無料開放日などの入城者も含みます。

調査概要

調査期間2023年6月12日(月)〜7月19日(水)
調査方法弊社より対象自治体・観光協会にアンケート票(PDF)をメール送信して返送またはフォームからの回答を依頼。
調査件数221件
回答件数180件(回収率81.4%)

送付できなかった、回答が得られなかったお城のうち、一部は新聞報道や自治体のサイトで発表された資料を参照して入力しました。

入城者数把握のむずかしさ

「入城者」といってもじつは統一された基準がないということをあらためて説明しておきます。
天守等の有料エリアの場合、チケットの販売数で確実な数字が出せるものの、招待チケットや無料招待日などがあると誤差が生じます。
そして城址公園など無料エリアについては、たとえば近隣住民が犬の散歩で毎日訪問していた場合にもカウントするのかなど、こうした観光客以外の入城者(この場合、来園者)を含めるかどうかの基準が決まっていません。山城などは赤外線センサーでカウントしているところもありますが、どのくらい正確に計測できているかは疑問です。

ただどのような方法であれ、そのお城において常に同じ基準で集計されているなら傾向を捉えることはできますし、施策の効果を分析する上でも十分だと考えています。

お気軽にお問い合わせください

攻城団では常にプロモーションする側(みなさま)とされる側(読者・利用者)の双方が納得し、また最大限の効果を発揮できるよう、細部にわたるまで入念に企画を立案いたします。検討の結果、お断りせざるを得ないこともありますが、まずはお問い合わせください。
また常に新しい取り組みを模索していますので、掲載されていない施策についてもお気軽にご相談いただけますようお願いいたします。
みなさまのブランドを毀損することなく、ファンの拡大につながるように我々にお手伝いさせてください。

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