全国のお城の入城者数(入場者数・観光客数)調査レポート【2024年版】

攻城団では毎年全国のお城(具体的には自治体や管理運営団体、観光協会等)にヒアリングをして、それぞれの入城者(入場者、入館者、入園者等)数を調査・集計しています。
お城によって「年」だったり「年度」だったりと集計期間が異なるので、年度集計の締めが過ぎた4月以降に調査をはじめ、ある程度の情報が揃ったタイミングで公開しています。

以下、今回のレポートをご覧いただく前の注意事項です。

  • このランキングは「2023年(1月〜12月)」もしくは「令和5年度(2023年4月〜2024年3月)」の数字を集計したものです
  • 工事などによる休館中のため「0人」の回答も含め、過去最多となる189城の数字が集まりました
  • 城址公園や山城などは無料で見学できるため、さまざまな方法を用いて推計されています
  • 数字については自治体等の発表資料や新聞報道を参照したほか、直接メールや電話でヒアリングをおこなっていますが、回答が得られなかったお城は対象外としています
  • 集計中や発表時期が夏以降と回答があり、発表日に間に合わなかったお城も対象外としています(翌年の発表時に反映させます)
  • 北陸地域で「年度」集計のところは正月に発生した能登半島地震の影響が大きいです

これらの点も留意しつつ、データを参照していただければ幸いです。

全体的な傾向として、今回の調査で判明したお城の約7割が前年比プラスになっているように、全国的に入城者数は大幅に増加しています。この理由としては2023年5月に新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行したこと、NHK大河ドラマ「どうする家康」がお城と関連性の高い作品だったこと、円安に伴いインバウンド(訪日外国人観光客)が増えていること、の3点が挙げられます。

今回のポイント

今回はじめて外国人観光客数を調査しました。
昨今、インバウンドによる恩恵や弊害(オーバーツーリズム)が叫ばれています。姫路城や大阪城など、日本のお城はインバウンド需要の高い観光地として認められる一方で、どのくらい外国人観光客が訪問しているのかを全国的に把握するデータがありませんでした。
今後の伸びしろや課題を共有する上でも重要なデータだと考え、調査協力をお願いしたところ、名古屋城や姫路城など多くの施設にご回答いただき、外国人比率を公表することができました。
※外国人の人数はいずれも推計値で、調査方法もパンフレットの持ち帰り数や受付でのヒアリングなどさまざまです
※大阪城、二条城、首里城など外国人観光客数を把握されていない施設もありました

また有料施設における有料入城者、無料入城者の内訳についても調査しました。
入城者数のカウント方法についてはそれぞれのお城ごとに異なっており、有料施設でも招待券などを配布したり、無料開放日などの入城者を合算して発表されているお城もあります。昨年までは合算値のみ発表していましたが、その比率はお城ごとに異なるので今回からは有料・無料の内訳も尋ねるようにしました。

では2023年版、全国の入城者数ランキングを発表します!

2023年 全国入城者数ランキング(有料施設)

大阪城(大阪府大阪市)が1位に返り咲きました。前年比でも倍増と突出しています。コロナ禍下では大きく落ち込んでいた(令和2年度24万人、3年度34万人)ことからも外国人観光客比率の高さが証明されていますが、コロナ禍前(令和元年度218万人)をこえていることからも日本を代表する観光地になったと言えるでしょう。
2位には昨年トップの名古屋城(愛知県名古屋市)が、3位には二条城(京都府京都市)と上位の顔ぶれは変わりませんが、いずれも前年の数字を大きく上回っています。

順位城名年間入城者数前年比有料
比率
外国人
比率
1大阪城2,402,157204.6%87.6%
2名古屋城2,059,707134.7%83.9%20.2%
3二条城1,856,673146.5%88.6%
4姫路城1,479,567154.5%92.8%30.6%
5熊本城1,353,520135.0%89.9%18.7%
6首里城959,458147.5%100.0%
7松本城897,424122.1%87.8%18.0%
8彦根城651,149112.5%91.1%5.2%
9犬山城604,619121.9%
10小田原城589,485112.5%93.5%8.4%
有料施設ランキング

4位の姫路城(兵庫県姫路市)は大阪城に次ぐ前年比154.5%を記録しており、また5位と6位には震災や火災からの復興が進む熊本城(熊本県熊本市)と首里城(沖縄県那覇市)が続いています。
7位以下には松本城(長野県松本市)、彦根城(滋賀県彦根市)、犬山城(愛知県犬山市)と国宝天守が並んでいます。残るもうひとつの国宝天守・松江城は373,237人(前年比135.6%)でした。10位の小田原城(神奈川県小田原市)も昨年に続いてのランクインです。
なおこのランキングは招待券などによる無料入場者も含む合算値(総入城者数)で算出しております。

有料施設のほとんどは天守などの建物があるお城ですので、これだけ国内外からの観光客が集まってしまうと天守に入るまでに1時間以上待たなければならないことも多く、混雑対策などが課題になっています。たとえば松本城ではホームページで待ち時間を告知したり、時間指定の整理券を配布するなどの対策をおこなっています。

2023年 総合ランキング

こちらは無料で見学できるお城(城址公園など)も加えたランキングとなります。
1位は昨年同様、金沢城公園(石川県金沢市=金沢城公園の入園者数)の258万人(前年比133.4%)でした。そのほか無料施設としては江戸城(東京都千代田区=皇居東御苑の入園者数)と仙台城(宮城県仙台市=有料駐車場入込数と観光循環バスの乗車人数)がランクインしています。

順位城名年間入城者数前年比有料
比率
外国人
比率
1金沢城2,584,169133.4%
2大阪城2,402,157204.6%87.6%
3名古屋城2,059,707134.7%83.9%20.2%
4二条城1,856,673146.5%88.6%
5姫路城1,479,567154.5%92.8%30.6%
6江戸城1,429,692242.9%46.8%
7熊本城1,353,520135.0%89.9%18.7%
8首里城959,458147.5%100.0%
9松本城897,424122.1%87.8%18.0%
10仙台城810,000337.5%
全施設ランキング

注目のお城など

以下、インバウンドや大河ドラマの影響など、いくつかのトピックに絞って注目してみたいと思います。

外国人比率が高いお城

日本政府観光局(JNTO)が発表する数字によれば、2023年(令和5年)の訪日外客数は2507万人で、前年(383万人)の6倍以上となったそうです。

外国人比率が高いと思われる大阪城、二条城(2019年度の数字で63%)、首里城の数字がないのは残念ですが、世界遺産の姫路城は外国人の入城者が年間40万人を上回ったのは初ということで、全体の割合でも31%を占めています。
また名古屋城(20%)、熊本城(19%)、松本城(18%)と外国人観光客が多数訪れる観光地においてはおおむね2割を占めていることがわかりました。一方でランキングではTOP10に入っていた彦根城(5%)や小田原城(8%)には伸びしろがありそうです。
なお今回の調査でもっとも外国人比率が高かったのは江戸城(皇居東御苑)で、全体の約半数にあたる47%が外国人となっています。

城名年間入城者数日本人外国人外国人
比率
江戸城1,429,692760,596669,09646.8%
姫路城1,479,5671,027,267452,30030.6%
名古屋城2,059,7071,643,144416,56320.2%
熊本城1,353,5201,101,011252,50918.7%
松本城897,424735,540161,88418.0%
八代城44,57036,6987,87217.7%
唐津城145,354125,52619,82813.6%
岡山城438,327382,07956,24812.8%
高松城240,369211,78328,58611.9%
勝連グスク108,83996,00812,83111.8%
杵築城23,22620,4892,73711.8%
外国人比率が高いお城

大河ドラマの効果

2023年(令和5年)に放送されたNHK大河ドラマ「どうする家康」の大河ドラマ館は徳川家康にゆかりのある静岡市、浜松市、岡崎市の3か所に開設されました。
最寄りの駿府城、浜松城、岡崎城はいずれも前年比で大きく増加しています。大河ドラマ館ではもっとも苦戦した「どうする家康 静岡 大河ドラマ館」に近い駿府城の伸び率がいちばん大きいのは不思議ですが、そもそも浜松・岡崎の2館がそれぞれの城内にあるのに対して、駿府の場合は駿府城公園から少し離れた静岡浅間神社境内に開設されたため駿府城との相乗効果はあまりなかったと思われます。
そう考えると3倍以上に増えた要因は2023年(令和5年)1月にオープンした静岡市歴史博物館(今年6月で累計来館者数が50万人)や天守台発掘調査現場によるものかもしれません。

城名令和4年度令和5年度前年比大河ドラマ館
来館者数
駿府城127,523388,452304.6%283,356
浜松城218,743418,104191.1%640,314
岡崎城185,105448,241242.2%636,420
大河ドラマ館が開設されたお城

リニューアルした天守のその後

昨年のレポートで「長期休館からリニューアルした天守」として取り上げた岡山城、福山城、長浜城に加えて、2021年(令和3年)6月に天守が再オープンして前回「7年ぶりの100万人超え」と発表した熊本城のその後の推移を見てみます。

城名令和3年度令和4年度令和5年度前年比
岡山城18,377202,418438,327216.5%
福山城0118,363166,791140.9%
長浜城17,39090,11893,542103.8%
熊本城447,8511,002,9781,353,520135.0%
近年リニューアルしたお城

岡山城はさらに倍増しており勢いが持続しています。
福山城もコロナ禍前は10万人に届いていなかったのでリニューアルは成功していますね。
長浜城と熊本城は前年比ではプラスですが、まだコロナ禍前の入城者数には戻っていないようです。

コロナ禍前との比較

全体の回復状況を把握するため、主だったお城の2019年/令和元年度比で比較してみました。
ほぼ同水準にまで回復していますが、姫路城と二条城はまだ下回っています。

城名令和元年度令和5年度コロナ禍比
姫路城1,548,0711,479,567-68,50495.6%
大阪城2,181,8502,402,157220,307110.1%
名古屋城2,036,2602,059,70723,447101.2%
二条城2,058,1521,856,673-201,47990.2%
松本城893,832897,4243,592100.4%

これらはインバウンドの影響が多いお城でもあるので、今年(今年度)の数字がさらに増加に向かうのかが注目です。

まとめ

そもそも論としては有料施設と無料の城趾を比較することに意味はありません。
有料のお城でも入場料は100円から1000円まで差がありますし、無料であっても公園化された市街地の城址もあれば、軽登山のような山城もありますので、これを単に人数の多寡で並べることの是非については葛藤もあります。
ただお城にはこのくらいの人が訪問しているという規模感を伝える上でランキングでの発表がわかりやすいため、随時補足や注釈を加えながら慎重に発表するようにしています。

2016年の開始から今回で9年目になるこの調査結果は、多くの自治体や観光協会において地元のお城と同規模のお城を確認したり、比較することで観光施策の立案にご活用いただいていると伺っています。
たとえば2023年から有料化した勝連グスクは昨年度も約11万人の入城者数を記録しており、これは有料化初年度である前年の8万6千人を大きく上回っています。姫路城をはじめ入場料の値上げや外国人向け料金との二重価格が検討されているように、城址の維持・整備には費用がかかりますので、こうした有料化後(あるいは値上げ後)の推移は意思決定の参考になるのではないでしょうか。

攻城団では全国のお城はライバル関係にあるのではなく、さまざまな文脈(コンテクスト)でつながりあえるパートナーになれることを提案しておりますので、各地のお城で実施された良い施策はどんどん取り入れていただきたいです。
さらに今回も特記事項として取り上げておりますが、大河ドラマによる上積みがどのくらい期待できるのかを過去の事例から推測することで、たとえば2026年(令和8年)に放送される「豊臣兄弟!」に向けての受け入れ準備にも大いに役立つと思います。

今回の調査でははじめて外国人比率を調査しましたが、お城によってけっこう割合に差があることがわかりました。来年以降も継続して調査することで、よりお城とインバウンドの関係についての実態が見えてくると期待しています。
また攻城団が運営する「お城ニュース」の年間記事数を見ても2023年は562本と、2022年(496本)・2021年(411)に比べて増加傾向にあります。お祭りなど各種イベントが再開したり、御城印を販売するお城も増えている結果でしょう。攻城団としても引き続き情報発信の支援をしていければと考えています。

最後になりますが今回もお忙しい中、調査にご協力くださったみなさまに感謝するとともに、今後もしっかりと本調査を継続していくことをお約束します。
また攻城団としてもみなさまのお役に立てるよう、新しい支援策を企画開発していきたいと思っております。

なぜ攻城団が調査するのか

これまでお城の入城者数ランキングとして発表されてきたのは全国城郭管理者協議会が発表するものが中心で、加盟城郭に限定されたものでした。

ではなぜ攻城団がわざわざ調査をして発表するのか。

これは「スタンプのない『日本100名城』以外のお城の訪問記録も残したいから攻城団をつくった」のと同じ理由です。
個人的に「わかりやすさのためにあえて絞ること」を否定しません。事実、攻城団でも「制覇モード」という機能を用意して、初期状態では知名度の高いお城だけが検索結果に表示されるようにしています。初心者にとって多すぎる選択肢は不親切でしかないとぼくは考えています。

ただし非表示にしたお城も確実に存在していたのです。そのお城にも歴史があり、現地では見学しやすいように整備をしたり案内板や城址碑を建ててくださっている方々がいらっしゃいます。
そこで攻城団は特定の基準にとらわれず、可能なかぎり対象を広くとって調査をおこない、お城を大事にされている方々の成果も記録していこうと決めました。

そして数字を把握し共有するだけでなく、長くマーケティングに携わってきた知見を活かしながら「なぜ伸びたのか(落ち込んだのか)」の考察も加えて、より多くのお城関係者のみなさんにとって役立つ存在になりたいと考えています。

攻城団では現地で開催されるイベント情報や日々の天気のデータも記録していますし、団員(利用者)が残してくれた膨大な写真やコメントもあります。
こうした定量・定性情報を組み合わせつつ、お城を観光振興に活かす成功モデルを構築していきたいのです。

ぼくらが目指しているのは「じっさいにお城に訪問する方を増やす(そして満足いただき再訪問率も高める)」ことなので、全国各地の観光再生・観光振興にたずさわっていければと思っています。
ありがたいことに日々の活動の中で多くの自治体や観光協会の方々との接点が生まれています。そのご縁を頼りに来年以降も、攻城団では可能なかぎり多くの城・城址(管理事務所や自治体の広報課、観光協会等)に問い合わせて、各地を訪問した観光客の数値を把握して発表していきます。関係各所のみなさまにはお忙しい中恐縮ではございますが、ご協力をお願いいたします。

これからも攻城団を、利用者にとって楽しく便利なだけでなく、現地の方々にも喜ばれるようなサービスに育てていくために、引きつづきご支援くださいますようお願いいたします!

今回集計したデータ

全国のお城にご協力いただき集計したデータを以下に公開します。

一覧表にある有料施設の数字は合算値(一部無料を含む)となっています。

調査概要

調査期間2024年6月5日(水)〜7月12日(金)
調査方法弊社より対象自治体・観光協会にアンケート票(PDF)をメール送信して返送またはフォームからの回答を依頼。
調査件数211件
回答件数189件(回収率89.6%)

送付できなかった、回答が得られなかったお城のうち、一部は新聞報道や自治体のサイトで発表された資料を参照して入力しました。

入城者数把握のむずかしさ

「入城者」といってもじつは統一された基準がないということをあらためて説明しておきます。
天守等の有料エリアの場合、チケットの販売数で確実な数字が出せるものの、招待チケットや無料招待日などがあると誤差が生じます。
そして城址公園など無料エリアについては、たとえば近隣住民が犬の散歩で毎日訪問していた場合にもカウントするのかなど、こうした観光客以外の入城者(この場合、来園者)を含めるかどうかの基準が決まっていません。山城などは赤外線センサーでカウントしているところもありますが、どのくらい正確に計測できているかは疑問です。

ただどのような方法であれ、そのお城において常に同じ基準で集計されているなら傾向を捉えることはできますし、施策の効果を分析する上でも十分だと考えています。

お気軽にお問い合わせください

攻城団では常にプロモーションする側(みなさま)とされる側(読者・利用者)の双方が納得し、また最大限の効果を発揮できるよう、細部にわたるまで入念に企画を立案いたします。検討の結果、お断りせざるを得ないこともありますが、まずはお問い合わせください。
また常に新しい取り組みを模索していますので、掲載されていない施策についてもお気軽にご相談いただけますようお願いいたします。
みなさまのブランドを毀損することなく、ファンの拡大につながるように我々にお手伝いさせてください。

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